法律と言う文章は非常に概念的であり、わかりにくいものになっています。
それが施行令、施行規則と詳細になっていくのですが、その文章や成り立ちには一種性格のようなものがあります。
そのような特徴を知っていれば解けたのかも?という問題を例に少し解説していきます。
高圧受電マンションに係る電気事業法
次の文章は、自家用電気工作物の保安及び高圧一括受電マンションの取扱いに関する記述である。(出典:電気技術者試験センター)
この問題を見て、え?マンション?と面食らった受験生は自分だけではないはずです。
今まで過去問でも出題されたことがなく、自分の所持している参考書でも見たことのない条文から出題されました。
内容は高圧受電マンションの保守について
通常のマンションは低圧受電で個別宅メーターに引き込まれており、それぞれ検診を行い支払いをしています。
よく扉の上部やその横などに電力メーターが取り付けられていたりしないでしょうか。
また、小規模マンションであれば外壁に一括ですべての宅のメーターが取り付けられているケースもあります。
それらはすべて低圧で受電されているため、一般電気工作物として扱われます。
ここでこの問題を解くための法律の知識を整理しておきます。
電気工作物の種類
電気工作物は一般用電気工作物、事業用電気工作物に分けられます。
ただよく聞くもので自家用電気工作物というものもあります。
自家用?自分ち?って思うような名称ですので紛らわしいのですが、自家用電気工作物は事業用電気工作物に含まれます。
事業用電気工作物とは一般用電気工作物以外のもののことです。
自家用電気工作物は送配電事業を行う事業の用に供する電気工作物及び一般電気工作物以外のもののことです。
まぁ、何を言っているのかわかりませんが(笑)簡潔に言うと。
一般電気工作物は低圧設備。
事業用電気工作物は電力会社。
自家用電気工作物はその他(電力会社でない特別高圧、高圧設備)
というざっくりとした理解をしています。
電気主任技術者が必要な設備の母数が一番多い自家用電気工作物を、その他にしてしまうのはどうかと思いますが、このあたりが電気”事業”法なんですね。
さて前置きが長くなりましたが、本題である問に入りたいと思います。
まず最初のaの文面。
こちらは高圧一括受電マンションに限る話ではないので過去問や参考書を見ていれば回答できたのではないかと思います。
続いて問題のbの文章。
電気工作物の種類は、\(\fbox{(3)}\)となる。
住戸部の電気工作物は、保安規定及び電気主任技術者の保安の監督の対象に\(\fbox{(4)}\)。
電気工作物の保安管理業務を外部委託により行う場合、住戸部の定期点検の頻度は、低圧受電の一般用電気工作物の調査と同様、原則的に\(\fbox{(5)}\)とすることができる。
ここが高圧一括受電マンションの話になり、初見だった方が多いのではないかと思います。
先に書きましたように、通常マンションは低圧受電で住戸毎に個別で契約されているため、一般用電気工作物となり保安規定に定められる電気設備点検などを行う必要はありません。
ただ、高圧で一括受電されていた場合、当然受電設備は自家用電気工作物になりますが、住戸部はどうなるのでしょうか?
という問い。
住宅部分が自家用電気工作物だと言うことになると、毎年毎年住宅部分にお邪魔して電気設備の点検を行う必要があります。(保安規定によりますが)
一般用電気工作物の場合、4年に一回の調査でよかったのにもかかわらず、高圧一括受電するがために厳しい点検が必要になります。
と、いうところで、実際に法律ではどうなっているのか?知っていますか?という問いです。
こういう聞き方をしているので、一般電気工作物扱いになるのだろう。という予想は立つのですが、(3)は定義として一般用電気工作物なのか、自家用電気工作物なのか迷うところです。
回答候補を見ると。
受変電設備は自家用電気工作物、住戸部は一般用電気工作物
受配電設備、住戸部のどちらも自家用電気工作物
受変電設備は自家用電気工作物、住戸部は特定自家用電気工作物
となっています。余計に複雑。
続く(4)はしっかり住戸部は主任技術者の保安範囲か?というように聞かれています。
そして最後の(5)は文脈から一般用電気工作物と同様にすることが読み取れますので4年に1回以上と回答できます。
一般的に例外制度を制定するときは、法律に則って規定されます。そして、”ただし~の場合はこうする。”というように、最初厳しく、但し書きなどで緩和案を出しておくという流れが多いです。
原則は自家用電気工作物だけど、仕方がないから緩和案を提供してやろう。ありがたくおもえ。という遥かに上から目線での制定です。(個人の感想です)
本音としては経済的に非合理的だからということかもしれませんが。
今回の場合も、マンションが高圧で受電している以上、そこに接続される設備は自家用電気工作物に当たりますので、どちらも自家用電気工作物。という扱いになります。
よって、そのままの流れで書かれている(4)もまた、電気主任技術者の保安範囲となります。
ただし、(5)のように住戸部においては一般電気工作物と同様に調査で良いよ。という流れで解答になります。
毎年だったり3年に一回だったりでも住んでいるところに知らない人が入るのは嫌でしょうしね。
高圧一括受電マンションが増えてきた理由
今回の問題にあるように高圧一括受電マンションが増えてきているようです。
その理由として、低圧で契約するよりも、高圧契約の方が電気代が安いからという理由になります。
ただ、先ほどの例題で勘違いしないようにしてほしいのは、点検は4年に一回でいいが、年次点検の際には住戸部においても停電が発生するということです。
受電している高圧部分は紛れもない自家用電気工作物です。それに電気的に接続されている住戸部についても、上位の高圧部分の停電により同時に停電します。あくまで一般電気工作物と同様に4年に一回の調査でいいよ。と言っているだけです。
保安のための年次点検は実施する必要があり、停電もバックアップ回路が無い限り避けることはできないでしょう。
マンションを購入する際は、先の河川の氾濫による電気設備停止もそうですが、このようなことも注意しておくといいかと思います。
最新のマンションだったりすると色々と停電対策兼防災対策もされているのかもですね。
それでは^^
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