法規を攻略するためには、法律になれるということ。
電気事業法に限らず、何をするにも法律というのはかなり重要な位置づけになるのですが、理科系で数字を扱うのが得意な人でも、文章の最高位に位置する法律はかなりやっかいでしょう。(良い意味で)
ですが、電気主任技術者として皆から信頼の目を集める立場としては法律は避けて通れません。
そんな法律について少し記事にしたいと思います。
法律の構成とその違い
法律法律と言っても、法にはいろいろな種類があります。
憲法、民法、刑法などの六法が有名ですが、電験分野で行けば電気事業法、電気工事士法
設備管理面で言えば、建築基準法や建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称ビル管法)などが有名です。
近年だと、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)や個人情報保護に関する法律などよく耳にします。
なっがーいものだと。(ん?)
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(通称:麻薬特例法)
偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律
などラノベかな?と思うような名称だったりします。(ついでに見つけた)
話が逸れましたが。
それらの法律は、その中でも法律、政令、省令、条例、規則などなど。
電気事業法(法律)でも、電気事業施工令、電気事業施行規則とあり、この中でもトップに位置するのが電気事業法が属する法律。続いて施工令、施行規則と続いていきます。
わかりにくい用語が続いていますが、ふーんそうなんだぐらいに覚えておいてください。
法律 施行令 施行規則 いったい法律ってどうなっているの?
電気の世界では、電気事業法、電気事業施工令、電気事業施行規則。
すべて電気事業に関わる法的拘束力を持つ法です。

全部同じ法律なら内容をまとめて同じにすればいいのに。
と思うのが普通ではないでしょうか。
施行令や施行規則の中には、
と書かれており、法第4条って何だ?何が書かれているんだ?ということを法律に遡らないと行けないため何度も、法と施行規則などを行ったり来たりをするため非常に分かりにくいです。
これらの違いは、とってもとっても大事な違いがあります。(皮肉込み)
まずこれら法律、施行令、施行規則を簡単に説明すると、一つは定めている内容の詳細さです。
電気事業法で大枠を制定し、施行令で大まかに決め、施工規則で詳しく制定しています。
具体的な例を挙げると、
電気事業法第38条第一項
他の者から経済産業省令で定める電圧以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物(これと同一構内に、かつ、電気的に接続して設置する小出力発電設備を含む。)であつて、その受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの。
とあります。
いきなりクセのある文章でいやらしいですが、こういう文章だらけですので法律と言う文章には慣れが必要です。
これに対して電気事業法施行規則では、
電気事業法施行規則 第48条
法第38条第1項の経済産業省令で定める場所は、次のとおりとする。(以下定めについて記載。略・・・)
として法の対象範囲を経済産業省令として細かなことを定めていきます。
先の電気事業法38条第一項の中で出てきた、経済産業省令で定める電圧以下の電圧、という文も。
施行規則の中で600Vとする。
と明確に数値で定められています。
また。
電気的に接続して設置する小出力発電設備
という法の一部の小出力発電設備について、
太陽光発電設備であって出力50kW未満のもの
水力、風力発電設備であって出力20kW未満のもの
内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力10kW未満のもの
燃料電池発電設備であって、出力10kW未満のもの
と施行規則で定められています。
大枠で決めた法に対して、施行規則は具体的な内容になっていることがわかります。
法律の区分は改定のしやすさ
そう書かれても、

なぜ法律や施行令などを分けているの?

より詳細な施行令だけでいいじゃないか。
訳の分からない文章が増えるだけ。
そう思うのは普通のことだと思います。

その気持ち忘れないようにしてください。社会人を続けていると、当然のこととして忘れてしまいがちです。
このように区分を分けてしまっている理由の一つは改定のしやすさです。
法を変えるためには国の最高機関である国会で決定する必要があります。
法改正などよく議論されていますよね。国会の皆様の広い知見を持って定められています。
施行令(政令)は内閣によって定められ、施行規則(省令)は省庁によって定められます。
ですので電気事業法施行規則であれば担当省庁である経済産業省によって定められています。
先ほどの施行規則で定められている内容を法に書いてしまうと、それを改定するのに大きな手間がかかってしまいます。
スピード感が必要な改正であっても、与党、野党共に改正に前向きになるぐらいの大型案件でないとスムーズにいかないでしょう。
また、

細かいことは現場に任せた!
という思いもあるでしょう。
利権渦巻く法律改正のめんどうくささ
今回例で出した、小出力発電内に含まれる小規模太陽電池発電設備なんですが、近年は大容量太陽光発電設備が普及してきました。
一昔前は、太陽光発電設備容量は20kW未満が小出力発電設備の範囲として認められていました。
この小出力発電設備の範囲から出てしまうと、一般用電気工作物ではなく主に自家用電気工作物になってしまい、電気主任技術者の選任や保安規定の策定、保安のための巡視、点検、検査が義務付けられます。
ただ、それでは大きなコストがかかってしまい、経済産業省としては政府の推進している再生エネルギー推進事業(太陽光発電も含まれる)に対して法律が足かせになってしまう可能性がありました。
また小規模な太陽光発電事業者が増えることで、

保安規定?何それ?ちゃんと電気工事してもらったから大丈夫でしょ。
という人も多くなってしまうことを恐れたのだと思います。
そのため、太陽光発電の平均標準搭載容量の増加に合わせて、小出力発電設備の容量上限を50kW未満に変更しています。
今回の件において、20kW未満という小出力発電設備の定義が法で定められてしまっている場合、これを時代に合わせて50kW未満に変更することは容易ではありません。

どうしてそうすることが必要なのかな?
そのことで誰が得するのかな?
法改正を行う国会という大きな場所に出すのであれば、それはそれは大きな裏取りや根回しに手間がかかります。

こんな時代の流れを汲んだ改正内容なのだから当然通るでしょ?
と思うかもしれませんが、利益あるところに人は集まります。
太陽光発電業者と仲がいい人はこの改正を推進するでしょうし、保安協会のような保安側としては仕事数が減る可能性があります。
情報に敏感な方は先行投資しているかもしれません。法律一つで大損の可能性もあります。
大なり小なり経済産業省も両方(太陽光発電業者、保安協会など)を管轄しているだけに無下にはできないとは思いますが、再生エネルギー推進という大義名分を持って、落としどころを専門家と共に見つけた結果。
容量上限を50kW未満に増やす。
という結果になったものと思います。
これは、実際改正された内容です。
理由は自分の見解ですので間違っている可能性もあります。
ですが、このような話はとても多いです。そんな細かい話を限られた国会の時間でやってられないですよね。
そのような考え方で法整備はされているので、法、令、規則と定める組織が変わってきます。
だからこそ法律に書かれていることは重要
今回は電験に触れている法律を例に説明してきました。
まとめてしまうと、
となっています。
法律に書かれている文章は基本、改正する必要がないように概念的に書かれています。
電験取得で選任されることができる電気主任技術者については、電気事業法の中では、
としか書かれていません。
どんな人が主任技術者になれるのか?
工事ってどんな?
維持運用のための保安規定は?
などは施行規則によって定められています。
ただ、法は概念的ではありながら電気事業に係る非常に大事なことが電気事業法では定められています。
参考書を見てまとめられた法律や実際に出題された過去問を順番に勉強してくのも大事ですが、一度電気事業法を見て、関連するところを電気事業法施行規則で追ってみる。
という勉強の仕方も面白いかなと思います。

覚えるだけの法規がちょっとだけ楽しくなるかもしれません。
電子政府の総合窓口e-Gov
その中から電気的な内容だけを抽出して解説している電気設備技術基準・解釈というところにつながっていけばいいかなと思います。
詳細な解説本はコチラになります。
実務でもかなり使える本ですが、普段から実務で使用する目的とするなら前者、後者は読みやすい代わりにかなり分厚いです。
それでは。
コメント