(1)図は三相誘導電動機の星形1相分の等価回路(定常状態)を示したものである。なお、漏れインダクタンスが一次側に集中するように、適正なインダクタンスが一次側に集中するように、適切な変換比を用いて二次側の諸量を一次側へ変換したものである。また、簡単のため鉄損を省略している。ここで、電源の相電圧を\(\dot{V}_1\)、一次電流を\(\dot{I}_1\)、一次抵抗を\(r_1\)及び漏れインダクタンスを\(l\)とする。
1)まず、図の誘導機の逆起電力\(\dot{V}_2\)について考える。
通常の等価回路では二次抵抗\(r_2\)と逆起電力\(\dot{V}_2\)を一まとめにして、等価的な抵抗\(\fbox{1}\)で表すことが多い。ただし、\(s\)は滑りで、電源の角周波数\(\omega\)と回転子の回転角速度\(\omega_m\)(電気角換算)より次式で定まる。
\[s=\fbox{2}・・・①\]
励磁電流を\(\dot{I}_m\)励磁インダクタンスを\(L_m\)とすると、励磁インダクタンスの電圧は\(\dot{V}_0=j \omega L_m \dot{I}_m\)であることから、二次電流\(\dot{I}_2\)及び逆起電力\(\dot{V}_2\)は次式のように計算され、\(\dot{I}_m\)との関係が得られる。
\[\displaystyle \dot{I}_2=\frac{\dot{V}_0}{\frac{r_2}{s}}=\frac{s\dot{V}_0}{r_2}=\frac{j(\omega-\omega_m)L_m \dot{I}_m}{r_2}・・・②\]
\[\dot{V}_2=\dot{V}_0-r_2 \dot{I}_2=(1-s)\dot{V}_0=\fbox{3}・・・③\]
二次電流\(\dot{I}_2\)と逆起電力\(\dot{V}_2\)の位相はともに、励磁電流に対して90度進みとなる。逆起電力に供給される電力(三相分)を\(\omega_m\)で除すことにより発生トルク\(\tau_m\)(電気角換算)を求めることができ、その結果は次式となる。なお、かんたんのため、励磁電流を位相の基準にとり、\(\dot{I}_m=I_m,\dot{I}_2=jI_2\)とする。
\[\tau_m=\fbox{4}\]
2)次に、三相誘導電動機での損失について考える。
電動機での損失(一次銅損と二次銅損の和)は次式で与えられる。
\[W=3r_1(I_m^2+I_2^2)+3r_2 I_2^2\]
\[=3(\sqrt{r_1}I_m-\sqrt{r_1+r_2}|I_2|)^2+6\sqrt{r_1(r_1+r_2)}I_m|I_2|\]
なお、回生運転では\(I_2\)が負となるため、\(I_2\)の絶対値\(|I_2|\)を用いている。
⑤式において、右辺2行目の第一項で\(\sqrt{r_1}I_m-\sqrt{r_1+r_2}|I_2|=0\)となるよう励磁電流の大きさを調整することで、同じ発生トルクに対して銅損を最小にすることができる。その条件は次式で表される。
\[I_m=k|I_2|・・・⑥\]
ただし、\(k\)は次式で与えられる。
\[k=\fbox{5}・・・⑦\]
この結果より、二次電流の大きさに合わせて励磁電流を調整すると銅損を最小にすることができ、省エネルギーとなることが分かる。
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