電験3種とエネルギー管理士試験はどちらが難しいのか 合格率の違いは取りやすさの違い

エネルギー管理士

高難易度資格である電験3種は電気の世界の登竜門と言われ、ここを超えることができるかどうかで、電気の管理者になれるかどうか決まってきます。

一方でエネルギー管理士(電気)は3種を取得した後に受験するイメージが強いです。

別名電験2.5種(数値が小さいほど難しい)と言われるのも、3種取得後も勉強をし続ける必要があるためなのかなと思います。

では、実際に3種とエネルギー管理士はどちらが取り難いのでしょうか。

どちらも受験した身として、取得のしやすさを基準として比較していきたいと思います。

電験3種とエネルギー管理士の難易度を評価する項目

資格試験の難易度を決めるのは、その問題の難易度は当然ですが、出題範囲得点率合格率などを考える必要があるかなと思います。

ここではそれらを一つずつ評価していきます。

まず、実際に比較されやすい問題の難易度から見ていきたいと思います。

エネルギー管理士と電験3種との問題の難易度

エネルギー管理士試験の問題かなり難しいです。

中には電験2種二次試験で出題されそうな問題も出れば、電験1種で出題されるものもあります。

一方で3種より易しい問題というのはほとんどみません。

難易度としてかなり高いという見方は正しいです。

ただ、大抵の場合、小問が誘導になってたり、簡略式などが記載されていることも多いため、問題の意味を理解しさえすれば難易度は高くても比較的解きやすいと言えます。

先ほど一例で出てきた電験2種二次試験の問題は、問題が全く親切ではないため勉強していない人は門前払い。という感じです。

もう少し言えば、電験3種の問題も同様に親切ではありません。

エネルギー管理士試験の問題は、難易度は高くても問題を理解することで分からない問題も解ける。のですが、出題内容が難しいのは間違いなさそうです。

出題内容の難しさ エネルギー管理士試験:10点 電験3種:4点

※高いほうを最高点の10点とし、片方を評価しました。

問題難易度の比較については後で書いています。

次に出題範囲見ていきます。

エネルギー管理士と電験3種の出題範囲の比較

次に出題範囲の比較をしていきます。

全ての項目を上げて比較すると大変なのですが、エネルギー管理士試験は基本的には省エネルギーに関することです。

ただ、省エネルギーと一言で言ってしまっても、情報処理技術を活用した人件費の面での省エネルギー。など、ストレートに省エネルギーに関与した範囲ではないため出題範囲は多岐に渡ります。

具体的な項目を挙げていきます。

電験3種で出題されて、エネルギー管理士で出題されない(にくい)範囲

発電所、変電所、電線のたるみ、鉄塔などの配電線路

エネルギー管理士試験で出題されて、電験3種で出題されない(にくい)範囲

三相不平衡回路、自動制御、物体の運動方程式、空気調和(選択問題)

 

ただし、上記で挙げた3種で出題されにくい問題というのは、物体の運動方程式、空気調和をのぞくと、1種2種では出題される範囲になります。

それら上位資格を狙う人にとってすれば、勉強すべき範囲に該当します。

※電験の法規、エネ管の課目1については、準ずる法律が違うため省いています。

発変電所、配電線路などは電験において必須分野です。そのため、範囲も広く問題も多岐にわたります。

一方で物体の運動方程式、自動制御については、エネルギー管理士試験ではかなり限定的に出題され、範囲はそこまで広くありません。

互い違いの出題範囲としても電験3種の方が範囲が広いと言えます。

出題範囲 エネルギー管理士試験:7点 電験3種:10点

としました。次に合格に必要な得点率を見ていきます。

エネルギー管理士と電験3種の合格得点率

電験3種とエネルギー管理士試験の得点率は共に60%以上の点数を取ることで合格できます。

また、共に科目合格制度を用いているため、4科目毎の科目合格は受験した年を含めず2年持ち越すことができます。

強いて言えば、電験3種は合格得点調整が入るのに対して、エネルギー管理士は得点調整が無いということでしょうか。

電験は調整年度によっては得点率が50%以下に下がることもありますが、そうでない年もあるため、その差はあまり無いと言えます。ただ、その差はほとんど無いと考えても良さそうです。

得点率 エネルギ管理士試験:10点 電験3種:9点

エネルギー管理士と電験3種の合格率の違い

エネルギー管理士試験と電験3種の合格率の差は非常に大きく、それぞれ、

エネルギー管理士(電気)の合格率平均:24.6%

電験3種の合格率平均:8.6%

と大きく違います。

このエネルギー管理士の合格率の高さはどこから来ているのか?ということを後の章で解説していますが、ここでは単純に数値を比較しています。

合格率の差 エネルギー管理士試験:4点 電験3種:10点

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電験3種とエネルギー管理士試験の取得難易度のまとめ

ここまででまとめた差について合計点で比較してみたいと思います。

出題難易度

エネルギー管理士試験(電気):電験3種 10点:4点

出題範囲

エネルギー管理士試験(電気):電験3種 7点:10点

得点率

エネルギー管理士試験(電気):電験3種 10点:9点

合格率の差

エネルギー管理士試験(電気):電験3種 4点:10点

合計 エネルギー管理士試験(電気):電験3種 31点:33点

いきなり点を合計するなという感じですが、一律の主観ということでご容赦ください^^;

わずかな差ではありますが、電験3種の方が取得しにくいという結果になりました。

もちろんこの結果は私個人の主観によるのですが、結果を見据えて記事にしたわけではありません。

正直なところ、電験3種の方が取得しにくいと感じている自分にびっくりです。

その理由について考えてみます。

合格率の違いは合格しやすさの違い。

タイトルから当然のことを言っているように感じですが、合格率の違いは試験難易度の違いではなく、合格のしやすさの違いだと感じます。

この点が電験3種とエネルギー管理士(電気)の大きな違いかと思います。

 

問題の難易度については解説しましたが、エネルギー管理士試験の難易度はかなり高いです、

ただ、その代わりに非常に問題に取り組みやすく、問題文にヒントの記載があったり、小問などで答えを誘導してくれます。

また、エネルギー管理士試験の出題範囲はかなり広いのですが、電験3種と比較すれば狭いです。

まとめて言い換えてしまうと、

合格率の高い試験は勉強の成果が反映しやすい試験

と言えます。勉強の成果が結果に反映し易ければ、勉強にかける時間が短くてすみます。

このことは勉強に充てる時間の少ない社会人にとっては非常に大きい理由かと思います。

その点、電験3種は勉強していて何を目的としているのかわかりにくく、一体どこまで勉強すればいいのか?と頭を悩ますぐらい成果が見えにくい試験だと思います。

次に、一部法律関連の問題を例にエネルギー管理士と電験の問題の比較になりそうなものを作ってみました。

電験の場合の出題例

高圧又は特別高圧の電気機械器具は、[  A  ]以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合は、この限りでない。(電気設備基準・解釈第12条)

選択肢 ① 取扱者 ② 設置者 ③ 技術者

解答はコチラをクリック
A、①取扱者

え?ちょ?同じような意味じゃないの?

みたいな予想のつかないものが多いのですが。

エネルギー管理士試験で同文章を問題として使用した場合

高圧又は特別高圧の電気機械器具は、取扱者以外の者が[  B  ]おそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合は、この限りでない。(電気設備基準・解釈第12条)

選択肢 ① 容易に触れる ② 接触する ③ 感電する

解答はコチラをクリック
B, ①容易に触れる 

まだ類推しやすいかなと思います。

この問の場合、[ B ]の次の文章が大きなヒントになります。

接触による危険のおそれが無い場合は、この限りではない。

とありますので、同じ言葉である②の”接触する”は文章の流れから、否定した内容をそのまま肯定していることになるため、文章としておかしいことが分かります。

そうすると①か③ですが、”接触による危険のおそれが無い場合は”という言葉に注目すると、この言葉は”接触しても大丈夫な場合”が想定されています。

すると、おかしいのが③の感電するという言葉。

感電は接触しなくても発生します。例えばこれが、”近接するおそれが無い場合。”となっていたら③の感電するを選ぶかもしれません。

この文言の場合は接触が前提となっているため、それに対応する①容易に触れる。という文言が入ると予想されます。

このあたりであれば、出題される場所が優しく、まだ予想のつく範囲かなと思います。(エネルギー管理士試験では電気設備基準からは出題されません。多分。)

只の一例ですが、こんな感じの出題に違いがあるため知らなくても何とかなる場合があります。

エネルギー管理士試験は実地に則した省エネルギーに関する問題が多く出題されるため、あまりひねった問題が出題されません。

工場で力率を改善して線路損失を減らす問題だとか、変圧器の銅損と鉄損から最大効率時の負荷率を求める問題など、省エネルギーを目的とした問題が多く出題されるため定型問題というものが良く出題されます。

電験3種の場合、出題される問題が単発になっており、どうしてその電圧を求めるのか。なぜ%インピーダンスを求めるのか。など、問題の目的が見えにくい問題構成になっています。

そのため、電験3種の勉強は問題を解くための勉強になりがちです。

問題の内容を理解することで記憶が定着がしやすくなるため、問題の目的がわかりやすいエネルギー管理士試験の方が勉強しやすいと言えます。

また資格に対する知名度も大きな影響です。

大きな知名度を持つ電験3種

電気の世界では電験3種とエネルギー管理士(電気)では電験3種の方が圧倒的に知名度が高いです。

そのため、まず電験3種を目標としよう!という人が非常に多く、高校生からでも受験する人はいます。

一方エネルギー管理士試験は試験自体に実務経験は必要ありませんが、合格後の免状取得には1年の省エネルギーに関する実務経験が必要です。合格後に実務経験を積み免状を後から取得することもできるのですが、どちらかというと社会人が多い印象です。

またエネルギー管理士(電気)は別名電験2.5種という通称もあるため、電験3種を取得した後で受験しよう。と考える人が多いのだと思います。

事実、出題される問題は難しいため、問題を理解するためにも電験3種を取得した後の方が勉強の効率は良さそうです。

そのことからもエネルギー管理士試験の方が合格率は高くなっているものと思います。

まとめとして長くなってしまいました。最後になりますが、エネルギー管理士試験は目的が分かりやすく、勉強していくと非常に面白い試験です。

試験勉強をしている時、まったくの無駄にも関わらず熱分野も勉強してみようかな、なんて思ったのは初めてです。

※ エネルギー管理士免状には熱で合格したか電気で合格したかの記載はありません。どちらでも同じ免状として資格所持者であることを証明されます。

今回の結果は、見方が違えば結果も変わってきます。

電験3種でバラバラとした知識が、エネルギー管理士の勉強していると点が線になっていくような印象で中々面白いです。電験3種を取得したけども、まだ電気について自信が無い方、一度過去問に取り組んでみてはどうでしょうか。

エネルギー管理士受験者にとって解説付きの過去問集はとても役に立ってくれます。

エネルギー管理士試験の受験を迷われている方の一助になればと思います。

それでは。

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