先日受験してきました電験1種二次試験。
今年の問題はどうだったのか?難易度は?などを例年と比較しつつ見ていきたいと思います。
以前の記事で紹介していない、本番で選択しなかった問題についても解いてみましたので参考にしてください。
紹介している問題は、電気技術者センターさんのHPで公開されております。
1種二次試験の問題の難易度と姿勢の違い
今回解いたのはあくまで、試験終了後の落ち着いた状態で問題を見て解いています。
限りある試験時間の中、一斉に解くのとは訳が違います。
当日はどれもモンスターみたいな問題ばかりに見えます。どれも解けそうにありません。
機械制御など、スタートダッシュかけて滑ったらもう起き上がれません。
本番は本当に怖いです。
そういう恐れが無い分、後から解くのはかなり楽なのです。
1時間目 電力・管理
時間的には2時間と若干の余裕はありますが、計算問題は1問30分以上かかる問題もあります。
悩んでいるとあっという間に時間に押され、焦りが生じます。
やはり論説が取れると楽になりそうです。
問1 タービン発電機の水冷却に関する論説 難易度☆5
タービン冷却に関しては水素が有名かと思いますが、今回は水を使用した冷却装置です。
水の方が冷却性能は高いのですが、やはり電気に水は心配。
これだけ身近にある物質が使われてこなかったのは理由があるはずです。
技術的な見地から見ていくと、知らなくても答えが出せるかもしれません。
問2 SF6ガスを用いたガス絶縁変圧器に関する論説問題 難易度☆4
SF6ガスの特性から適用箇所に関する問題が出題されました。
保守性、設計上の留意点、冷却装置など電気に関することでありながら、設計管理など細かな範囲から出題された印象です。
変電所勤めの人ならなんなく答えられるのでしょうけれども、大半の人がそうではないと思います。
ただ、SF6ガスを使用した機器は色々なところで出題されており、それらの特性を総合すれば答えは予想できるかもしれません。
難易度としては高めです。
問3 送電端と受電端の電力円線図に関する問題 難易度☆3
送電線に抵抗成分が含まれている関係で、計算が少しややこしくなります。
極座標表示を使うよう誘導してくれるのでそこまで難し訳では無いですが、慣れていないと計算ミスをしそうです。
ですが、落ち着いて解かなければいけない状況でこれは中々大変です。
作図もあり、円を書く時に定規で、何点かプロットしてつなぎました。
受電端と送電端を間違えてはいけません(戒め)
問4 2相短絡に関する電圧変動の問題 難易度☆4
条件が色々とややこしく、整理できるかどうかがポイントです。
また、与えられた条件を漏れなく整理し、それらをどう組み立てて答えを導くか。
その道筋が見えるかどうかが完答するために重要です。
この問題は対称座標法を使って2相短絡の電流電圧を求めることも可能ですが、平成25年の電力管理で出題されたような対称座標法の結果を利用した解き方でないと時間が足りなくなります。
そこを省いてしまえれば、計算はそれほど大変ではありません。しっかり誘導してくれているのでまだよい方かと思います。
問5 分散型電源の電圧上昇問題 難易度☆3
途中に証明もあり、送電線に抵抗成分もありでややこしくなることが見えそうですが、連系点と無限大母線の相差角が省略できるため、一気に楽になります。
ただ、この問題も、普段と逆向きの潮流。そして簡易計算の慣れが必要です。
(2)の証明問題が出来てしまえばあとは代入問題。
前半出来なくても後半で点数が取れてしまいます。(採点される。。。?)
問6 系統周波数の低下と出力調整問題 難易度☆4
系統の周波数低下とそれに対する調整方法の問題です。
比較的よく出題されるような分野ですが、聞かれていることが調整方法であり、80文字程度の解答とのことなので、どの発電機をどうするか?ということまで問われているのかと思います。
答えはいくつかあると思われますので、正答の範囲は広いのではないかと想像します。
後半は比較的標準的な内容ですし、説明も簡単な定周波数制御の方を求められています。
最後に難易度調整したのかな?と思うぐらいです。
ですが量も多く若干難しめかと思います。
2時間目 機械制御
1時間しかない機械制御は、基本的なパターンを覚えて解ける問題を解くような形で臨みます。
その方が一気に駆け抜けられるのですが、今回の1種試験はそう易しいものではありませんでした。
一部を除いて。
問1 d軸q軸に分離した突極形同期発電機の問題 難易度☆4
最初の(1)のベクトル図が書けるかどうかがこの問題を選択するかどうかの分かれ目かと思います。
問題文に沿ってd軸q軸に電気子電流ベクトルを分解して無負荷誘導起電力を求めます。
これの同期電動機版が一次試験で過去に出題されたことがあるため、できた方もいるだろうと思いますが、その平成29年1種一次試験機械科目ではベクトル図が表記されていましたが、今回は0から作図しなければいけません。
その書いたベクトル図が正しいものかどうか。そこまで自信を持っていないと本番で選択するのはかなりの勇気が必要です。
中々厳しい問題かと思います。
問2 変圧器の短絡試験、無負荷試験に関する問題 難易度☆1
変圧器の問題なのに文章長いな。
なんて思っていたら電験1種でこれ?と思うような問題でした。
続く問題があると思って、次のページ開いたらパワーエレクトロニクスの問3だった。
という人は多いのではないでしょうか。
ただ、導出の過程を説明せよ。と書いてあるのが落とし穴かもしれません。
焦らず問題文を良く読む必要があります。(泣)
問3 三相サイリスタ整流回路を用いた遅れ角の問題
パワエレって大事だよね。いつかはやらなきゃだよね。
問4 伝達関数のゲインと最大値 難易度☆3
伝達関数は与えられていますが、ボード線図を書いてゲインを求めたり(書かなくてもいいのですが書いた方が確実)、またゲインの最大値を求める問題が出題されました。
ベクトル軌跡、ボード線図、ゲインのつながりをイメージしておかないと厳しい問題です。
ただ、計算量は多くなく、誘導もしてくれるので慎重に進めていければ、完答は難しくとも得点できたのではないかと思います。
全体を通して難易度と選ぶべき戦略
電力管理は全体的に難しく、簡単に取れそうな問題はありませんでした。
機械制御も難しくはあったのですが、変圧器がある程度点数を支えそうです。
細かく見ていきます。
令和5年度の電験1種二次試験電力管理の感想
電力管理はやはり論説が分かればそれを取りに行くべきですが、中々難易度が高かったものと思われます。
計算問題はどれも定型的なものではなく、全て考えて解く必要があります。
ですが、電力円線図、2相短絡、配電系統の近似式などに慣れていれば、それらの延長で解くことができるかなと思います。本番の環境でそれができるかどうかはその人次第なので、自分のような緊張してしまう人は論説対策は重要だと感じました。
その上で考えて、なお2題、計算問題を選ぶとすれば、問3の電力円線図と問5の分散型電源かなと思います。計算式は大変かもしれませんが、数値計算が少ないというのは助かります。問4はどこかでミスしてしまいそうな感じです。焦っていたらなおさらです。
それにしても、今年の電力管理は系統電力よりの問題ばかりな気がします。1種なのでそうと言えばそうなのですが。
昨年度は絶縁劣化の問題や、V結線変圧器の問題も出題されましたが、今年は唯一の配電系統問題が分散型電源の逆潮流問題であり、印象としては送配電系統を重視したと言った感じです。
難易度としてはやはり全体に高め。簡単と思われる問題はありませんでした。
令和5年度の電験1種機械制御の感想
一方で、機械制御な難易度差が激しく、問題選択はかなり難しい判断です。
自分は偶然にも変圧器を選ぶことができましたが、あくまでもそれは問4の自動制御を諦めたから。
そうでなければ問4で時間を取られ、問1をまともに考えることができず撃沈していた可能性もあります。
基本戦略としては、同期機、誘導機、変圧器、自動制御、(パワエレ)の中でも基本的な問題を間違いなく解けるようにしておき、本番で冷静に簡単な問題を選ぶ。
簡単な問題が無ければ、部分点を基本戦略でどれが一番点数が取れるか。という視点で臨むのがいいのかなと思っていましたが、今年それが当てはめられるのは問2の変圧器の問題と問4の自動制御です。ただ、自動制御は慣れていないと結構厳しい問題です。
それらを踏まえて、今年の機械制御は変圧器の難易度を考慮すれば標準的と言えるかもしれません。
二次試験全体を通して
今年の問題は定型的な問題が少なく、全てその場で考えさせる問題だったような気がします。また一方で、そのせいか全体として計算量は控えめです。
昨年度あたりから出題の傾向が少し変わってきて、計算量がぐっと抑えられているような。そんな感じさえします。
今後もこの流れが続くのか、それとも元に戻るのかはわかりませんが、問題への理解を深め、現象を理解し組み立てるための勉強が必要なことは確実です。
今回の合格予想点数としては103点~105点とし、足切り点数は平均点ー5点と予想します。
二次試験合格率は13%程度でしょうか。
神の領域と言われる電験1種ですが、1種まで勉強するとようやく全体の電気の流れがつかめるようになる気がします。きっとそこには面白い世界が広がっているはずです。
(別名:電験沼)
冗談です。それでは。
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