こんにちは、はっちです。
先日、11月9日の夜間に四国で大規模な停電が発生し、36万5300戸が停電したとのことでした。
実際に何が原因で起こったのか?は後に色々判明するだろうということで置いておいて、電験で勉強したことを使って色々と考えてみたいと思います。
実務に直結する電験の内容は、そういうところに勉強のポイントがあるような気がします。
四国大規模停電発生の原因
大規模停電の原因については、既に四国電力送配電さんよりプレスリリースがありました。
9日午後2時20分ごろ、四国と本州を結ぶ送電線でトラブルが発生。対応する作業中、四国への電気の供給が不足して需給バランスが不安定になり、送電が自動的に停止されたという。
とのことです。
もう少し調べた結果、四国と本州を結ぶ本四連系線は50万V系のOFケーブルで敷設されており、2回線の内片側回線において異常が発生し、1回線送電であったところ、異常復旧し2回線送電を開始したところ、なぜか、紀伊水道直流連系線において四国から本州方面への潮流が増加。それに伴って四国系統の負荷が上昇し、周波数が低下。
周波数低下によりUFR(周波数低下リレー)の作動により火力発電所が解列。
さらに周波数が低下し大規模停電に至った。
とのことだそうです。
ここで勉強のポイントが3つあります。
・なぜ直流連系線において四国から本州側へ大きな潮流が発生したかのか?
・火力発電所が解列した理由
・大規模停電ではあるがブラックアウトしなかった理由
この3つの内、1つ目を最後にして、2つ目、3つ目は電験を結構勉強していると分かる範囲なのでそこから行きたいと思います。
主に想像を働かせて想定していますので、実際の原因とは違う可能性は高いことをご了承ください。
火力発電所が解列した理由
負荷が増えたのなら、火力発電所の出力を上げればいいじゃん。と考えてしまうのですが、火力発電所の出力を上昇させるには、燃料投入量を増やし、蒸気を作り、タービンをさらに回す必要があります。
今回のような一気に負荷変動が生じた場合、その調速動作よりも先に周波数低下が来てしまうため、タービンの危険速度に達してしまいます。
火力発電所のタービンは過熱蒸気を採用できるため、回転数を上げ、また、エネルギーを効率よく使うため、高圧、中圧、低圧とタービンの軸長を長くし、蒸気のエネルギーを回転力に変えていきます。
そのため、タービンの固有振動数が下がり、周波数低下による周波数と共振する危険速度が同期回転速度の近くに存在してしまい、その共振による機器の破損を避けるため、他の発電所よりもUFR(周波数低下リレー)を高めに設定してあることから、早期に解列してしまったものと思われます。
ここは勝手な想像ですが、ただ、解列したといっても火力発電所はFCB(ファストカットバック)により、所内単独運転で運転を続けて、火力発電を停止させない機能があります。
火力発電は一度停止してしまうと、数時間~の起動時間がかかります。
そのため、火力発電を停止させないぎりぎりの所内運転を続けられる限度まで運転を継続し、その間に系統の周波数が復旧できれば、再並列、順次出力を増加させながら復電することができ、今回はその機能により早期復旧していったものと思われます。
・大規模停電ではあるがブラックアウトしなかった理由
周波数低下の影響は連系系統全域にわたり、その影響は非常に大きなものとなります。
実際に北海道胆振東部地震の際、火力発電所の脱落を契機に、周波数が下がり、また他の要因も作用して、周波数を維持できる限界を超えて下がってしまったため、北海道全域がブラックアウト(停電)しました。
ただ、今回の四国停電ではそうはなりませんでした。
ここで活躍したと思われるのが、事故波及防止リレーなのかなと思います。
周波数低下において、本来であれば危険速度が近い火力発電所が次々と解列され、周波数低下の連鎖が続き、最終的にブラックアウトしてしまうのですが、この事故波及防止リレーにより、周波数低下の程度、系統の負荷のパラメータ、発電出力や予備力を収集し、必要最低限、周波数が元に戻せる負荷制限(停電)範囲に限定して実施したのではないかと思います。
ここで、オンラインによる演算処理が行われたと思いますが、事前に系統の情報量を数十秒ごとに収集、想定される事故が発生した時に、どうすることが最良なのか?を適宜演算する事前演算方式。
事故中、事故後のパラメータを収集し、最適な制御を実施する事後演算方式のどちらが使用されたのかはわかりませんが、この事故波及防止リレーの能力が発揮されたため、停電範囲が限定されたのではないかと思われます。
・なぜ直流連系線において四国から本州側へ大きな潮流が発生したかのか?
こちらはかなり想像の範囲ですが、四国系統における周波数低下を受けて、本来であれば本州から四国方向へ潮流が発生するはずです。
この場合、関西送配電から、四国送配電への系統間の直流による融通になりますので、EPPSという緊急系統間融通が実施されます。
このEPPSという機能は、東関東大震災の前までは、大量の潮流が発生することを考慮して、送電側系統からの潮流を2段階の融通として実施されることになっていました。
ですが、実際にその影響度は低く、周波数低下という急激な変動に対して有効ということから、最近新設された、50Hzー60Hz間の飛騨信濃直流幹線では1段階(いきなりMAX潮流)のみの潮流制御が実施されるように設定されました。
それに伴い、同様に50Hzー60Hz間をつなぐ佐久間、新信濃、東清水周波数変換所においても同様に1段の緊急融通になったと聞いています。
ただ、それは中部電力管内と東京電力管内の大きな系統同士の話であり、実際に関西電力と四国電力をつなぐ紀伊水道直流連系に対してそれが実施されたかは分かりません。
もしそれが間違った設定がされていたら・・・?
通常の場合、四国側の発電電力量の増に対し、系統周波数の差による潮流制御が行われるのは通常の制御であり、EPPSとの融通に制限がかからず、四国側から要求されるままに関西側に潮流量を増やしたことで、四国側の周波数が低下、火力発電所の解列。というのも考えられるのかと思います。
このEPPSには、送電側の系統の状況を確認して、緊急融通しても大丈夫であることを確認してから電力を送電することになっています。
ですので、今回のように四国から本州側への潮流であれば、四国側の系統の状態を確認しているはずです。本来であればそこで周波数低下が起きており、四国から本州へは送電できない。となるはずです。
そう考えると、今回のように四国側の周波数低下に対して本来と逆向きの潮流制御が行われてしまったことはかなり変なことになります。
実際にそうなっている可能性というは非常に低いと思われますし、その設定自体、経済に影響を与える非常に大層なものです。
ちゃっちゃっと変えられるものでは無いでしょう。
ただ、実際にEPPSを使う事態というのは災害時でもない限りほとんどありません。間違った設定というのは、事故が無ければ何事もなく経過していきます。
今回、たまたま実施され、間違いが見つかった。となったのかもしれない。
と想像してしまうところです。
結果的に大規模な停電になってしまうも、周波数低下という一大事に対して、停電範囲がある程度に抑えられたのは、系統運用者の日々の努力のためかなと思います。
見えない電気の事故というのは、原因の究明が中々難しいところではありますが、その事故に対して可能性を検討し、再発防止を考えるのは電気の勉強を続けるメリットかなと思います。
勝手な想像で色々書いております。
実際には違う原因である可能性は高いですが、その事故は確実に今後の運用に行かされるものと思います。
安全で安定な系統運用の努力いつもお疲れ様です。
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