技術士にふさわしい実務経験とは。実務経歴書に書くべき内容と8つの能力

技術士一次・二次試験

自分は技術士にふさわしい実務経験があるのかな?

技術士試験を受けるにあたって、まず気になるところが必要な実務経験を自分は積んでいるのかどうか、だと思います。

技術士にふさわしい実務経験とは何でしょうか。受験資格としては最大7年の実務経験が必要ですが、その業務は技術士としてふさわしい業務である必要があります。

会社に技術士の先輩がいて、その元で働いているのならば問題はないでしょう。ですがそういう人が大半だとは思いません。

受験料14,000円を払った上で、

あなたの実務経験は技術士にふさわしくないよ。

と言われても面白くないですしね。

技術士にふさわしい仕事とは何か、また、実務経験証明書(業務経歴書)に書いておいたほうが良いことを受験した経験から、記事にしたいと思います。

技術士としてふさわしい業務とは?

技術士としてふさわしい業務については、実は受験案内に記載があります。

科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務に従事している(いた)者。

とされています。業務経歴に書く際は、この5つの業務内容にする必要があり、これらの業務で7年間の業務内容を埋める必要があります。

ただし、ずっとこの業務をしている人は少ないと思います。仕事の中で携わっていた業務に含んでいれば大丈夫ですので、それほど難しく考える必要はありません。

はっち
はっち

んん?なんか当てはまらないような・・・

と思うかもしれませんが、案外その幅は広く取れます。

ただ、その中で重要になってくるのが次に挙げる8つの能力です。

技術士に求められる8つの資質能力(コンピテンシー)

いきなり出てきたこのコンピテンシーという言葉。

このコンピテンシーという言葉は覚えておいてください。

コンピテンシー:優れた成果・業績をもたらす業務遂行能力の高い人物に共通した考え方や行動特性

とのことです。よくわかりません。

技術士試験において非常によく出てきますが、あまり一般社会では使われない気がします。

はっち
はっち

意識高い系かと思われそう

この技術士に必要な資質能力(コンピテンシー)とは何かを見ていき、この資質能力を高めることができるような仕事をしていることが技術士として必要な実務経験になります。

このことは技術士受験案内に記載がありますので、受験される際はそちらでも確認しておいてください。

技術士試験とコンピテンシー

技術士試験は、受験者がそのコンピテンシーを満たしているかどうかを問う試験です。

ですので試験ごとにそれぞれのコンピテンシーを試す試験内容となっています。

それぞれ、一次試験、二次筆記試験、二次口頭試験と分けてみていきたいと思います。

技術士一次試験

技術士一次試験で問われるコンピテンシー(資質能力)とは次のように表されています。

・科学技術全般に関わる基礎知識
・技術士法第4章の規定の遵守に関する適正
・受験する専門科目の基礎及び専門知識

何だか難しそうですが、これらは技術士の一次試験を合格することで、その資質がある。とみなされます。

技術士一次試験合格に必要な勉強時間は?電験持っていれば簡単かというとそうでもない。
技術士試験ってどれぐらい勉強が必要なんだろう?専門じゃないけどな・・・ こんにちは、はっちと言います。 今回、技術士を目指すためにまず一次試験を受験してきました。 自分は電験を取得しているため、そこそ...

この段階では実務経験については問われないため、これから紹介する実務経験が無くても合格することができます。

技術士二次筆記試験

続く二次試験では一次試験合格レベルのコンピテンシーに加えて、

1,専門的学識
2,問題解決
3,マネジメント
4,評価
5,コミュニケーション
6,リーダーシップ
7,技術者倫理
8,継続研さん

の8つの能力が試されます。

一つ一つ見ていきますが、自分の仕事と照らし合わせて該当しているかどうかを確認すると良いと思います。

前半2つは筆記試験で主に問われる項目となっており、後半6つが実務経験として必要な資質能力になります。

専門的学識

技術士は総合技術監理を除けば20部門の専門部門に分かれています。

その中でも分野毎にさらに細分化されており、自分が受験した電気電子部門であれば、

電力・エネルギーシステム、電気応用、電子応用、情報通信、電気設備

の5つの分野に細分化されます。

電気電子部門全体としての知識、また、細分化された実務に応じた範囲においての専門的知識を試されます。

試験方法は筆記試験であり、論文形式で出題されます。

次の問題例は電気電子部門ですが、雰囲気だけでもお伝えできればと思います。

専門科目の問題例(電気設備分野の例)

Ⅱ-1-1 高圧又は特別高圧で受電する需要家は、電力系統に流出する高調波電流を限度値以下に制限する必要がある。需要家内での高調波発生原因と配電系統の電圧波形がひずむ理由を高調波発生源として代表的な汎用インバータを例にとり説明せよ。また、高調波電流が限度値を超過する場合の高調波抑制対策を2つ挙げ、それぞれの内容を述べよ。 

II-1-2 非常電源・予備電源の直流電源装置に用いられる代表的な蓄電池及び停電に備え満充電を維持する充電方式の概要についてそれぞれ2種類述べよ。 

Ⅱ-1-3 屋外監視カメラに使用する主な撮像素子について述べよ。また、撮像素子以外の監視システムを構成する技術について2つ挙げ、その特徴を述べよ。 

Ⅱ-1-4 一般的な工場内の低圧CVTケーブル幹線サイズ選定の手順を説明したうえで、環境配慮導体サイズ設計(ECSO)の考え方を述べよ。

※ 令和3年度 筆記試験より

この内、1つを選択して600字で回答します。

実務能力というよりも、知識力を試される項目ですので、勉強すれば合格ラインにたどり着けると思われます。

問題解決

こちらも上記、筆記試験で問われる内容です。

こんな課題に対してどう、解決しますか。

このような仕事に対して、どうアプローチしますか。

またそうした時の波及効果は。

など問題解決のイメージからトラブルに直面した。と取られるかもしれませんが、どちらかというと与えられた仕事をどう解決していきますか。

ということが問われます。

問題解決の問題例(電気設備分野の例)

Ⅱ-2-2 運転開始当初に比べて、水道需要が半減している既設浄水場において、商用電力から2回戦で電源供給する老朽化した電気設備(A系、B系)を通常運用しながら更新するための基本設計を行うことになった。電気設備の更新業務の担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1) 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。 

(2) 留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者と調整方策につて述べよ。 

※ 令和3年度 筆記試験より

この3題について1200字以内で回答します。

実務に則した分野が出題されればラッキーですが、大抵の人がそうはならないと思います。

実務とは違う分野であっても、電気電子の知識を活かして解決方法を提示する必要があるところが難しいところです。

自分の仕事の分野はもちろんですが、様々な分野の知識を入れておくことが大事です。

技術士二次口頭試験

二次筆記試験を突破すると、次に口頭試験が控えています。

ここでは二次筆記試験で問われた知識を前提に試験が行われます。

筆記試験で問われるコンピテンシーについても無視することはできません。

はっち
はっち

ここからが実務に関連する部分です。

マネジメント

業務を計画し実行するにあたって、品質、コスト、工期、リスク、人員などを監理する必要があります。

それらを統括的にまとめ、経済性、安全性、機能性などを満たす成果物を提供できるかどうかという、マネジメント能力について試されます。

難しくなってしまいましたが、実際の業務の中で、人を動かして他者からの要求をどのように達成してきましたか?

ということが問われます。

人を動かすポジションじゃないと行けないということはありません。ですが、自分が中心となって進めた業務である必要があります。

基本的に筆記試験の後の口頭試験で問われる内容ですが、筆記試験の問題解決の論文の中でも必要にな考え方になってきます。

評価

業務を実施した後、その業務に対してどう評価し、次の仕事につなげてきましたか。

ということが問われます。こちらも主に口頭試験で問われる内容ですが、筆記試験でも論文の書き方として必要な知識になります。

よく言われるPDCAサイクルのことになりますが、この業務のどこがPでどこがDですか。

などとは口頭試験では聞かれません。

業務の改善を常に念頭に置いて仕事をすることで、自ずと経験できる項目だと思われます。

ルーティン(日課)であっても考えながら改善していきましょう。

コミュニケーション

仕事を実施するうえで、上司、同僚、ユーザー、クライアントなどとどのようにコミュニケーションを取ってきましたか。

という問いになります。

普段使うコミュなどという意味合いとは少し違い、多様な関係者との間で、文書、口頭などで、明確な意思疎通をどのように行ってきましたか。という問いになります。

仕事をする以上、一人で仕事をすることはないと思います。

求められているから仕事があるはず。そこには必ず相手がいます。

その方々とどう仕事を実施し成果を伝えてきましたか?ということです。

こちらも主に口頭試験で問われますが、筆記試験でも使える項目です。

リーダーシップ

仕事を実施するうえで、利害関係者とどのように調整しとりまとめましたか。ということが問われます。

こちらもジャイアンのような”俺様について来い!”的なリーダーシップという意味では無く、多様な関係者と利害などを調整し取りまとめた経験。が問われます。

ですので、役職についていないといけない、ということはなく、仕事の客先に自分の考えを伝える。まとめる。どちらかというとコミュニケーションに近い雰囲気になります。

こちらも主に口頭試験で問われますが、筆記試験でも記載できる考え方です。

技術者倫理

仕事を実施するうえで、技術者としての倫理観はどうですか。その倫理を持ってどういう仕事をしてきましたか。

ということが問われます。

自分、もしくは会社の利益のために人を貶めるようなことはしてはいけません。

公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、地球環境の保全、技術者としての信頼を損ねるようなことを技術士としてしてはいけません。(技術士倫理要項より)(むずかしっ!)

やらしい質問ですと。

上司から技術者倫理に反することを指示されました。あなたはどうしますか?

など口頭試験において聞かれるかもしれません。

技術者倫理は主に口頭試験で問われる項目ですが、筆記試験でも問いの中に含まれる内容です。

間違っても、

会社という組織のためにはしょうがありません。

などと言ってはいけません。(ぇ)

継続研さん

技術士として仕事をする上で、技術力を持っていることが前提であることが多いでしょう。

20年前に技術士取得したけど、何もしていない。20年前の技術で仕事したら、技術も進歩してる、法律も変わっているで仕事にならない。ではだめです。

技術士として継続的に研さんを続けることが、技術士として必要な義務として課されます。

この項目は主に口頭試験で問われます。

仕事の上でというよりも、仕事外のことが多いかもしれません。

講習会に出席して勉強している。専門誌を読んでいる。などが該当するかなと思います。

学会発表している。特許申請しているなどがあるとより良さそうです。

私はもちろんありませんでした。。。(ちょっと不安なところです)

8つのコンピテンシーを高いレベルで求められる。

以上書いてきたことに該当する業務と言われると、ルーティンワークだと該当しないような気がしますが、そのルーティン自体がすでに効率化されたものである可能性があります。どうしてそういう業務内容になったのかを調べて自分の経験にすることでいくつかの項目は達成できるのではないでしょうか。

技術者に求められるコンピテンシー(資質能力)は幅が広いため、どうしても抽象的な言い方になってしまいがちです。

また高いレベルと言われても、正直自分がどのレベルか分からないかもしれません。

より具体的には次の記事で紹介したいと思います。

https://denken40.ismart-diy.com/gijutusiwork/

他分野の方でも参考にしていただければと思います。

それでは^^

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