技術士試験って難しいって言われるけど一体どれぐらいの合格率なんだろう?
技術士という資格は、所管の文部科学省からは、”最高権威”と言われるだけに難関であることは間違いありません。
では、年間でどれぐらいの人が合格し、技術士と名乗ることができるのでしょうか。
技術士受験に必要な要件
技術士の合格率を見ていく前に軽く受験資格についてみていきます。
技術士試験はまず、一次試験を合格することで技術士補の資格を得ることができ、そこから実務経験を加味して二次試験を受験することができます。
この資格は技術士の補佐的な資格なので、技術士一次試験に合格できる程度の学力があれば良いとされており、受験に必要な要件はありません。
また、大学でJABEE認定単位を取得している場合、一次試験が免除される場合もあります。
認定校を卒業していても、指定の単位を取得していないと免除はされません。
技術士一次試験の合格率
技術士一次試験は、”試験での正答率が50%で合格”とほかの試験に比べて低いためか、合格率も高くなっています。
技術士一次試験の全体の合格率は次のようになっています。
グラフで合格率を表すと次のようになります。
近年の平均値は5割弱と相当高い合格率となっていますが、上下する率も大きいため油断はできません。特に2021年は一次試験の合格率が低くなっており、主に適性試験が難しかったことが原因のようです。
問題の内容は簡単ではありませんが、合格必要点数が5割、また選択問題が多く含まれることから合格率はその難易度に比べて高くなっています。
技術士一次試験は、基礎科目、適正科目、専門科目と別れており、基礎科目、適正科目は全受験生が共通の問題ですが、専門科目については受験者の申請した科目での受験となります。
科目は様々な分野があり20分野の中から選択することができます。
それぞれの科目合格制度はありませんが、他資格の保有状況によっては免除になる科目もあります。ただしハードルはかなり高く、ほぼすべての受験生が全科目受験することになると思われます。
技術士一次試験(電気電子部門)
それでは次に、科目別の例として自分が受験した電気電子部門の一次試験合格率を見ていきます。
これらの合格率をグラフに表すと次のようになります。
合格率に相当の変動があるため、難しい年とそうでない年との差が大きいです。
ただ、グラフにはありませんが2000年ごろに比べ、2015年ぐらいになると受験者数がかなり増えてきている分、対策情報も出てくるようになったのでしょうか。合格率が安定してきている気がします。
やはり電気系の資格としては電験という王様がいる中で知名度は低いですが、それでも受験者数を見ていると、知名度は少しずつですが上昇しているような気がします。
省エネ、人口減少、環境の保全と電気電子の知識が用いられる場所は非常に多岐に渡ります。今後、エネルギー管理士と同様に有効な資格になるかと思います。
一次試験の勉強ではこの参考書を使用しました。
技術士二次試験の合格率
続いて最大7年の実務経験(一次試験合格前を含む)を経て受験できる技術士二次試験の合格率についてみていきたいと思います。
技術士二次試験の合格率と合格者数の推移は次のようになっています。
こちらはまず、受験者数と合格者数をグラフにしてみました。
二次試験の合格率はおおよそ10~15%程度と一次試験に比べてかなり低くなっています。また、2020年のコロナの影響で受験者数は随分下がっていますが、合格者数はそれほど変わっていないようです。ただ合格者数だけ見るとかなりの減少傾向です。
表の合格率を見ると、技術士一次試験を突破する実力を持ちつつ、さらに実務経験を積んで技術力を高めた人の中でこの合格率はかなり難しいと言えます。
それゆえか、一次試験の受験者数よりも二次試験の受験者数の方が多いという面白い結果になっています。
実際にこの二次試験を突破することで、晴れて技術士を名乗ることができるため、難易度は相当高くなっていると思われます。
内容は、必須科目1題、専門科目2題の技術論文を作成してどちらの科目も60%以上得点する必要がありますが、論文ですので採点基準はわかりません。
技術士として毎年10%を少し超える程度の合格率にとどめておきたい。というような感じがしなくもありません。
技術士二次試験の合格率(電気電子部門)
続いて受験科目として、技術士二次試験電気電子部門の合格率を見ていきます。合格率は次のようになっています。
こちらも受験者数と合格者数をグラフにしてみました。
上記の表を見ても、受験者数の減少の変化以上に合格者数の割合は年々減少しております。
2022年度はついに10%を切るまでに合格率が下がっており、数年前と比べると合格者数は半分以下になっており、2023年度も引き続き難化傾向にあります。
2019年より全問論文試験となったことである程度合格者数調整がしやすくなったことを考えると、合格者を年に100人程度に抑えようとしているのかもしれません。
また電気電子部門は各分野によって合格率がかなり違ってきます。
電気電子分野 分野・選択別合格率
続いて分野・選択別の合格率を見ていきたいと思います。
電気電子部門は、電力・エネルギーシステム(旧発送電変電)、電気応用、電子応用、情報通信、電気設備の5選択に分かれています。
まとめてグラフにすると次のようになります。上限は見やすさのため30%にしています。
情報通信は比較的安定したグラフをしていますが、他の選択はかなり乱高下しています。
電気応用、電子応用、また著しく合格率が低下しているのが電気設備です。
分野選択別になると、合格率が10%程度にしたい思いはあっても、容赦なく実力の無い人は落とされている。そんな感じがします。
2023年度の電気設備の4.2%は相当厳しい結果です。
口頭試験(面接試験)
さきほどの2次試験合格率の中には筆記試験を突破した後の口頭試験も含まれています。
2次試験はおおよそ7月に試験があり、その後11月下旬ごろに合格発表の後、合格者は12月~1月にかけて決められた日程で口頭試験に臨みます。
おおよそ仕事をしている受験生のことを考えて、試験日は土日が選択されるようですが、中には平日が口頭試験の日という方もいらっしゃいます。
この口頭試験は東京で行われ、実際のその分野の専門家の方と面接し、技術士としてふさわしいかを問われます。
仰々しく書いてしまいましたが、面接では業務経歴に書かれている実務について実際にその業務についての内容や、技術士法の中の技術者倫理、二次試験の筆記で書いた論文について質問されたりと様々なようです。
一方でこの口頭試験は”合格させるための試験”とも言われています。
実力は筆記試験で見ているため、願書で書いた業務経歴などが真実か見極める、その業務経歴が技術士としてふさわしいものかどうかの確認したい。ということのようです。
基本的にそのようなことは、実務を通して理解しているのであれば落ちにくい試験と言われています。また、技術士としてふさわしい業務、というのが何を指すのかは、自ら問題に直面した時にどのように課題を解決してきたか?ということが必要です。
口頭試験は合格率が非常に高い分野(100%合格)もあれば、そうでもない分野(33%合格)もありますが、受験者数の多い建設部門を見てみると8割~9割以上の人が合格できているようです。
令和3年度の電気電子部門では口頭試験合格率は90.0%。
ですが油断はできないかなと思います。1割は落ちているので、落とす理由はあるはずです。
ただ、合格率10~15%程度の難関筆記試験を突破してきた人たちの中でも、それだけ落ちるということを理解して、きちんと対策しておかないといけません。
最後に
技術士2次試験については先月受験してきましたが、非常に真面目な方が多い印象です。ですがそのような人たちでも、受験回数は相当多くなっているような話を小耳に挟みました。
私の知り合いでは、実務経験も豊富で実力もあり技術士を多く出している会社の方でも、一次試験を含めて7年かかった。という話も聞いています。
試験の内容が、技術士として課題に対してどう考え、解決し、その後の波及効果をどう見ていくか。というような内容で1800字以内に論ぜよ。
のように非常に抽象的であり、深い知識と広い見聞が問われる試験になっています。
日々の積み重ねとたゆまぬ向上心を持ち続けることが大事であり、試験対策でありながら、今後技術士として役に立つ知識を取り入れ続けることが必要とされるため、合格、不合格に構わず勉強する姿勢が大事だと感じさせる試験でした。
技術士を取得するという目標はありながらも、それはあくまで過程だ。と言われているような気がします。
博士号と同等な価値があると言われている技術士。
合否に関わらず、軽いものではないということを実感します。
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